実家を解体して更地にしたら「売れない」と言われた
-「もう30年以上、実家のことで頭を悩ませてきました。何度も役所や大手不動産会社に相談したのですが、一向に解決の兆しが見えなくて。けれどNPO法人空家・空地管理センターさんが開催している個別相談会で対応いただいた担当者さんに相談したら、トントン拍子で話が進んで、あっという間に売却できたんです。本当に担当者さんには感謝してもしきれません」-
-「もう30年以上、実家のことで頭を悩ませてきました。何度も役所や大手不動産会社に相談したのですが、一向に解決の兆しが見えなくて。けれどNPO法人空家・空地管理センターさんが開催している個別相談会で対応いただいた担当者さんに相談したら、トントン拍子で話が進んで、あっという間に売却できたんです。本当に担当者さんには感謝してもしきれません」-
そう熱を込めて語る髙田さんが実家を相続したのは、1991年に父が亡くなったとき。母はずいぶん前に亡くなっていたため、二人の兄と3人で共同相続することになり、話し合った結果、両親を看取った髙田さんが6分の4、2人の兄は6分の1ずつ相続した。
髙田さんはすぐにでも実家を売却して現金化し、3人で分割しようと思ったが兄たちとは仲が悪いこともあって猛反対された。仕方がなく1ヶ月に1回程度、家の状態を見に通うことにした。それは決して簡単なことではなく、近隣住人から苦情が入ることもありお詫びに行った回数は数えきれないほど。
通い続けて20年ほど経ったころ、東日本大震災が起き、近隣住民から「倒壊して被害が出る前に壊してほしい」と強く要望された。そこで改めて隅々まで状況を確認してみると、1階にある部屋の天井の隅に外からの光が差し込むほどの大きな穴が空いていた。
-「これはすぐにでも倒壊するかもしれないと危険を感じて、2人の兄には黙って更地にしました。その後、解体費用を3分の1ずつ負担してもらうために連絡すると、長兄も近所の方から苦情を言われて困っていたようで、喜んで費用を払ってくれました。けれど次兄はちょうど自身が交通事故に遭ったタイミングで落ち着いて話せる状態ではなかったので、少し経ってから手紙で次第を伝えたんです。そしたら『解体するなんて話は聞いてないからお金は払わない』と言われてしまって」-
-「これはすぐにでも倒壊するかもしれないと危険を感じて、2人の兄には黙って更地にしました。その後、解体費用を3分の1ずつ負担してもらうために連絡すると、長兄も近所の方から苦情を言われて困っていたようで、喜んで費用を払ってくれました。けれど次兄はちょうど自身が交通事故に遭ったタイミングで落ち着いて話せる状態ではなかったので、少し経ってから手紙で次第を伝えたんです。そしたら『解体するなんて話は聞いてないからお金は払わない』と言われてしまって」-
解体費用の負担について釈然としないながらも、近隣からの苦情の心配はなくなった高田さん。「あとは売却するだけ」と少し肩の荷が降りた気持ちになったが、苦難は第2章に突入。
不動産会社へ売却の相談に行くと、共有名義というだけで良い顔をされなかった。なぜならば買い手が見つかったところで、名義人の一人でも「売らない」と言ったら契約破棄になり、買い手も不動産会社も被害を被ることになるからだ。名義を一本化するため、2人の兄の持ち分を買い取ることにした髙田さん。解体からの流れがあったため、長兄からはすんなりと購入できたが、問題は次兄だ。実情や髙田さんの夫が実家の維持にかかる諸費用を負担してくれていたことなどを懇々と説明し、いままでの父の介護や実家の管理・解体などにかかった諸費用と相殺ということで譲渡してもらった。
無事に名義を一本化でき、今度こそ売却できると思った髙田さん。しかし不動産会社から告げられたのは「この土地は売却できない」というひと言だった。
問題解決の糸口を求め、個別相談会へ
なぜ売却できないと言われたのか。そこには建築基準法の改正が関わっていた。建物を建てる際、原則として建築基準法上の「接道義務」というものがある。具体的には「建物を建てる際、原則としてその敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していなければ、建築物を建てることができない」という法律だ。
髙田さんの実家の敷地は幅員4mの道路に接しており、間口を隣家と分けているものの道路との接地面は2m以上あるため一見問題はない。しかし間口が斜めに分割されていたため、道路形状の先端が三角形になっていた。このような道路形状は、昭和45年の法改正により道路と認められなくなった。これにより「接している道路が道路としての要件を満たしていないため、再建築は不可能」と言われたのだ。
加えて建物を壊して更地にしていたのがマイナスになった。柱1本でも建っていれば「再建築可能」と判断されるのだが、接道条件を満たしていないなどで再建築ができない土地は原則、更地にすると建物を建てられない。こうした理由から不動産会社は「売却できない」と返答したのだった。
髙田さんは到底納得できず役所の窓口を尋ねるも、マニュアルに倣った対応しかしてくれない。「実際に建っていたのだからおかしい」と何度訴えても、「わからない」「接道していないので建築できない」など、その答えは要領を得なかった。その後も測量会社や弁護士など、さまざまな専門家のもとへ相談しに行くも解決せず。法務局にもらった土地の公図を持参してほかの不動産会社も訪ねたが、「役所がダメと言っている時点で無理」と門前払いされる始末だった。
まさに八方塞がりで途方に暮れていた2020年12月、ある市報が髙田さんの目に入った。NPO法人空家・空地管理センターが主催する「空き家と相続に関する個別相談会」のお知らせだ。専門家に相談できるのなら、何か解決の糸口が掴めるかもしれない--。髙田さんは藁にもすがる思いで参加した。
-「ご相談を伺って、ずいぶん大変な目に遭っているんだなぁと想像しましたが、すぐに大きな問題ではないと楽観視できました。道路法や建築基準法は随時変更されていて、現行法では認められなかったとしても、一度建築基準法により特定行政省から指定を受けた位置指定道路は、そこは歴とした法律で認められた道路となります。しかも敷地の前面道路は、特定行政庁が建物を建てることを目的に位置指定した道路ですから、問題ないことは間違いありません。そのことは、10年以上の経験を積んだ不動産会社であればわかるはずです」-
-「ご相談を伺って、ずいぶん大変な目に遭っているんだなぁと想像しましたが、すぐに大きな問題ではないと楽観視できました。道路法や建築基準法は随時変更されていて、現行法では認められなかったとしても、一度建築基準法により特定行政省から指定を受けた位置指定道路は、そこは歴とした法律で認められた道路となります。しかも敷地の前面道路は、特定行政庁が建物を建てることを目的に位置指定した道路ですから、問題ないことは間違いありません。そのことは、10年以上の経験を積んだ不動産会社であればわかるはずです」-
役所の窓口で要領を得た回答を得られなかったのは、役所の人事体制が起因しているのだろう。役所に勤める公務員は、だいたい3年ごとに部署異動する。そのため一つの業務に関する深い知識や経験は身につかず、どうしてもマニュアルに沿った対応になりがちなのだ。だからこそ担当者のような専門家が交渉人になることが有効になる。
-「担当者さんが『問題ない』と言ってくれて、目の前がパーッと明るくなりました。不動産会社はどこも相手にしてくれなくて、ひどい場合だと『どうしても売りたいのなら』と、相場の3分の1以下を提示してきたんです。親が苦労して買った土地なのに、こんなに買い叩かれたら親が泣くと悲しくなってしまって。担当者さんが引き受けてくださり、これでようやく売却への道筋がついたのだと、視界が開けた気持ちになれました」-
-「 担当者さんが『問題ない』と言ってくれて、目の前がパーッと明るくなりました。不動産会社はどこも相手にしてくれなくて、ひどい場合だと『どうしても売りたいのなら』と、相場の3分の1以下を提示してきたんです。親が苦労して買った土地なのに、こんなに買い叩かれたら親が泣くと悲しくなってしまって。担当者さんが引き受けてくださり、これでようやく売却への道筋がついたのだと、視界が開けた気持ちになれました」-
現地調査で問題解決、半年かからずに無事売却
年が明けた2021年1月、髙田さんからの不動産価格査定依頼を受理した担当者は、さっそく現地を確認し役所などへの物件調査を実施した。役所を訪ねて「敷地の接道面は昭和38年に位置指定道路になっている。法改正されても、私道の廃止がされていない以上、道路であると認められるべき」と指摘し、調査を要望した結果、法律でも認められている道路であると発覚。役所は認識不足を認め、髙田さんに謝罪した。
その後、担当者と相談を重ね、個人に売却する方針で進めることが決まったところで、NPO法人空家・空地管理センターが提携している不動産仲介会社に対応が引き継がれた。
-「髙田さんのご実家があるのはバスの利便性が非常に良い街。最寄駅からバスで10分ほどの場所にある住宅街で、周りには高い建物がなく、近隣には大きな公園や学校、スーパーなどがあります。駅前には商店街もあって利便性は十分。また私道の突き当たりにある土地なので子どもを安心して遊ばせられ、子育て世帯に需要があると思ったのです。案の定、想定通りの方がすぐに購入されました」-
-「髙田さんのご実家があるのはバスの利便性が非常に良い街。最寄駅からバスで10分ほどの場所にある住宅街で、周りには高い建物がなく、近隣には大きな公園や学校、スーパーなどがあります。駅前には商店街もあって利便性は十分。また私道の突き当たりにある土地なので子どもを安心して遊ばせられ、子育て世帯に需要があると思ったのです。案の定、想定通りの方がすぐに購入されました」-
2021年7月、無事に売買契約が締結。30年近く悩んだ末、すがる思いで参加した個別相談会からわずか半年ほどで解決まで進んだのだ。そして現在、高田さんのご実家が存在した場所では、新たな住人たちが人生の思い出を積み重ねている。
実家の売却を終えて
「ずっと負の遺産だと思っていた」と髙田さんは振り返る。ずいぶん長い間、夫婦で「あの土地どうしよう」と言い合い、毎年5月になると固定資産税の請求書を見ては、ため息をついてきた。夏は汗だくになって草をむしり、このままずっと負の遺産と付き合い続けるのだろうかという不安が頭から離れたことはなかった。そんな日々から解放された喜びは、何ものにも代え難い。
-「私たち、元は仲の良い兄妹だったんです。それがいつの間にか仲が悪くなってしまって……。しかもいざ売却しようとしたらこんなに苦労するなんて、想像もしませんでした。更地にしたら問題が生じるなんて知らなかったし、そもそも自分の土地に問題が起きるなんて考えたこともなくて。私のように法律を知らなくて、大変な目に遭っている方は少なくないと思うんです」-
-「私たち、元は仲の良い兄妹だったんです。それがいつの間にか仲が悪くなってしまって……。しかもいざ売却しようとしたらこんなに苦労するなんて、想像もしませんでした。更地にしたら問題が生じるなんて知らなかったし、そもそも自分の土地に問題が起きるなんて考えたこともなくて。私のように法律を知らなくて、大変な目に遭っている方は少なくないと思うんです」-
実際、髙田さんの友人にも同様に「間口が狭くて、家を売るのに何年もかかった」という方がいる。その件も、専門家が介入してようやく解決したそうだ。
-「不動産会社や役所との交渉は、素人だとうまくいかないことがあります。なので担当者さんのような専門家に相談して救われる方は、絶対にたくさんいるはずです。困っている方ほど専門家を頼ることが、もっとも解決の近道になると思います」-
-「不動産会社や役所との交渉は、素人だとうまくいかないことがあります。なので担当者さんのような専門家に相談して救われる方は、絶対にたくさんいるはずです。困っている方ほど専門家を頼ることが、もっとも解決の近道になると思いますす」-
そう熱く語ると同時に、家屋の解体を考えている方は、「解体することで生じる制約をまずは調べて欲しい」と訴える。無知は災いを呼ぶ。しかし世の中のほとんどの人は総じて、不動産や相続において無知なのだ。大切な思い出が詰まった場所を良い着地点に導くため、まずは知識を蓄えることが大事であり、状況に応じて専門家に相談することが有効なのだと、髙田さんは実感したと言う。
担当者の振り返り
髙田様の第一印象は「本当に困っているんだな」というものでした。少なからず不動産業界にかかわっているものとして、大変申しわけない気持ちもありました。今回はほとんどの一般の方が知らない法律の問題が絡んでいましたが、そもそも知識というものは、一朝一夕には身につけられないものです。今回のような場合、行政も不明点が多く、私たちのような専門家も事実を証明し説得するための理論武装が必要となります。
当然、私たちも不明点は数多くあります。しかし、わからないことはわからないままにせず、知識や経験を得ることが、依頼者の課題解決に繋がるのです。今回は、そのことに改めて気づかされたように感じます。
短期間にいろいろございましたが、高田様はわからないことがあれば随時、私にご連絡をくださいました。一緒に解決することでお力になれて、本当に良かったと心から思っております。