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トラブルを防ぐための認知症対策

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近年、認知症の患者数は増加しており、今後も増え続けることが予想されています。一方で、あまり知られていないのが、認知症と診断されてしまうと実家の相続対策として、できなくなってしまうことが多いということ。そのため、空き家にせざるを得ないといったケースも増えています。

認知症とは

認知症とは、認知機能に障害が起きてしまうことです。具体的な認知症の症状は、もの忘れや徘徊などが代表的です。認知症になると、どの老人ホームへ入居するかを決めたり、預金などの資産を管理したりすることができなくなってしまいます。同様に空き家となっている自宅を売ったり貸したりといった判断もできなくなってしまいます。

認知症による契約無効

<認知症になると、できなくなる事項の一例>
●不動産の売却や賃貸
●大規模なリフォーム工事(修理は除く)
●貯金の引き出しや解約
●遺言書の作成や民事信託の組成
●遺産分割協議への参加 など

※認知症などで判断能力が低下した人がおこなった上記の行為は無効となる場合があります。
認知症になると自宅が長期間空き家になる?
認知症になってしまうと自宅の売却や賃貸、大規模なリフォームなど、契約を伴う行為ができなくなってしまいます。これらの行為をおこなえるようにするには、成年後見人をたて、家庭裁判所から許可を得る必要があります。そこで、ご家族などのご本人の支援者は「成年後見制度」について、予め知っておく必要があります。

認知症の方などの契約行為を代行する成年後見制度

成年後見制度とは、認知症や精神障害などで判断能力が低下・喪失した方の生活上の支援や財産管理を、後見人と呼ばれる第三者が代わりにおこなう仕組みのことで、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があり、主な特長は以下の通りとなります。

法定後見制度 任意後見制度
後見人について 家庭裁判所にて選定される 自分で自由に選定できる
不動産の活用や処分 家庭裁判所の判断に委ねられる 後見人との契約内容に従い履行できる
(裁判所の許可は不要)

任意後見制度とは

任意後見制度

任意後見制度とは、自身の判断能力があるうちに(認知症になる前に)、自身で自由に後見人と後見内容を決めておくことのできる制度です。

また、任意後見・法定後見ともに本人の財産を守るための制度なので、民事信託(家族信託)のように本人の財産にリスクがある財産の使い方はできません。例えば、賃貸ビルの大改装や建て替えをして家賃を上げたい、といったことなどが挙げられます。

任意後見契約の流れ

  • 任意後見契約の流れ1

    自身に代わって誰に意思決定してもらいたいかを決めます。
    任意後見人は信頼できる方を選びましょう。一般的には家族のほか、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家に依頼します。

  • 任意後見契約の流れ2

    任意後見人ができることは以下の2つですが、法定後見に比べ任意後見は具体的な範囲を指定することができます。

    ●財産管理 ●身上監護

    財産は管理のほか、保存や処分(売却や賃貸をすること)についても定めることができます。つまり、自宅の管理だけでなく修理したり、売却したりする権限を後見人に付与することができます。

    身上監護とは
    身上監護とは認知症になってしまった方の生活や治療、介護などについて意思決定をすることです。例えば老人ホームへの入居手続きや、病院での治療内容についての決定などです。後見人自身が介護をおこなうという意味ではありません。
  • 任意後見契約の流れ3

    任意後見契約は、公正証書による契約でなければいけません。
    公証人という法律の専門家のもと、委任する側もされる側もきちんと契約内容を理解しているかの確認をおこなった上で契約を締結します。

  • 任意後見契約の流れ4

    任意後見は、認知症にならないと後見はスタートしません。
    任意後見受任者は、本人の判断能力が低下してきたと感じたら医師の診断を受け、任意後見開始の申立てを家庭裁判所におこないます。その後、任意後見人を監督する後見監督人が選任され、後見がスタートします。

民事信託(家族信託)とは

民事信託とは、不動産などの財産を所有する人(委託者)が、信頼する人(受託者)にその不動産などの財産を託し、受託者が契約内容に従って受益者のために、その不動産などの財産を管理したり、処分したりすることです。信託銀行などが引き受ける商事信託でないものが民事信託と呼ばれており、その中で主に近親者同士が委託者と受託者になるケースを家族信託と呼んでいます。

民事信託は、認知症になってしまったときに誰が自分に代わって財産の管理・処分をするのか、どのような方針で運用がされるかなどを予め決めておくことができます。また、信託する財産の範囲を自由に決められる二次相続の対策も可能など、認知症対策だけでなく相続対策としても柔軟性の高い制度です。

民事信託_概要図

<民事信託でできることの一例>
●信託する財産の範囲を自由に設定できる
●二次相続対策にも活用できる(※)

※自分の相続だけでなく、さらに後の相続も決めることができる。遺言は自分の相続のことしか決められません。
民事信託を利用する際の注意点
  • 1. 資産をどう活用し、承継し、それを誰に託すかを決めないといけない
    民事信託は家族の財産の使い方、承継の仕方を自由に設計することができます。自由度が高い分、信託する財産の範囲、活用の方法、家族間の役割分担などについてさまざまなことを決めないといけません。

  • 2. やり直しが難しい
    民事信託では、信託内容を変更する方法が当初の契約内容によって異なるので、家族全員で十分話し合って契約内容を決めることが重要です。長期に渡る契約により、税務などチェックする点が多数あるため、必ず専門家に相談することが必要です。

【事例:その1】民事信託で財産を自分以外のためにも使う

  • 課題

    Aさんには難病と闘っているBさんという妻がいます。夫のAさんが療養をしている妻の治療費を負担しています。ただ、もし自分が認知症になってしまったら妻の治療が続けられなくなる可能性があると、何かしらの対策をしたいと思っていました。

<信託の内容>

Aさんは今後の妻の治療費のため、息子Cさんを受託者、Aさんを受益者とする民事信託を信託財産1000万円で設定することにしました。信託の目的に、Aさんと妻Bさんの生活費及び治療費のために信託財産を使う旨を記載しました。

その結果、Aさんが今後認知症になってしまったとしても、Cさんに信託された1000万円をBさんの治療のために使うことができるようになりました。また、Aさんが死亡した後も信託は継続するようにしました。Aさん死亡後の受益者を妻B さんとし、受託者CさんがAさん亡き後もBさんのために治療費を使えるようにしました。

民事信託事例01

【事例:その2】自宅のみを信託する

  • 課題

    Aさんは高齢者施設への入所を予定しているため、空き家になってしまう自宅の売却を検討しましたが、どうしても手放すことができず悩んでいました。認知症になってしまったら子どもたちが代わりに処分してくれればと考えていましたが、所有者であるAさんが認知症になってしまうと自宅の売却が難しいということを知り、どうしたら良いか悩んでいました。

<信託の内容>

Aさんの財産は自宅と預金がありましたが、預金はまだ自分で管理したいと思っていたため、自宅と自宅の管理や売却時に掛かる最小限の金銭のみを信託財産とする民事信託を設定することにしました。

Aさんが委託者、息子のBさんが受託者、Aさんを受益者とする内容でした。こうすることで、もしAさんが認知症になった場合でもBさんが自宅を賃貸したり、売却したりすることができるようになりました。

民事信託事例02




   

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