2015年12月14日 公開
平成28年度の税制改正大綱で空き家に関するものも数多く制度化されました。当センターで最も注目しているのは空き家を解体または耐震化工事を行った上で売却すると、譲渡所得から3,000万円が控除でき、大幅に譲渡所得税が減額されるというものです。多くの空き家は所有者の実家が相続されたものです。相続の際には相続税を支払っている人も多く、売却時にも税金がかかることに抵抗がある方は少なくありません。そのため、3年間の期間限定で売却しても税金が安くなれば(もしくはかからなくなる!)、売却を検討する所有者も多いのではないでしょうか。
相続した空き家を売却して譲渡益が出た場合、その譲渡所得に対しては所得税と住民税が課されます。譲渡所得というのは、その空き家を売却した価格から、親が不動産を取得するのに要した費用を引いた利益のことです(他にも不動産売却に要した仲介手数料なども控除できます)。相続が発生した場合は取得金額が分からないということも少なくありません。そのような場合は売却価格の5%を取得価格とみなすことも可能です。
例えば、1,000万円で空き家を売却し、その空き家の取得価格が分からない場合、みなし取得費用は50万円となり、950万円が利益となります(仲介手数料などの売却経費は考慮せず)。取得してから5年以上が経過している場合の所得税・住民税は合計20%のため、このケースでは以下の通りとなり、190万円の税金を支払う必要があります。
1,000万円(売却価格)-50万円(取得費用)=950万円(譲渡所得)
→950万円(譲渡所得)×20%(所得税+住民税率)=190万円(税金)
今回の税制改正では、空き家を解体もしくは耐震工事を行った上で売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除することができるというものです。つまり、先ほどの例では、譲渡益が950万円のため、控除制度を利用すれば税金は0円になります。この減税を受けられるのは、空き家になる前は被相続人(親)のみが住んでいた場合となっているため、賃貸併用住宅や賃貸戸建として活用していた場合は利用することができません。
※別途、復興特別所得税(0.315%)が必要となりますが、ここでは説明を省略しています。
対象工事 | 相続した空き家の売却 |
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補助期間 | 相続から3年経過した年の12月31日まで(2018年まで) |
所得税の減額 | 譲渡所得から3,000万円を控除 |
対象物件 | 被相続人が住居として使用していた空き家 |
利用条件 | 空き家を解体した上での売却、または 旧耐震基準で建築された空き家を耐震化した上での売却のいずれか |
備考 | 売却価格が1億円を超える場合は利用できません |
空き家は、当然ですが、今まで住んでいた人が引っ越した後に住む人がいないため空き家になります。空き家の多くが相続した実家であるというのは前出の通りですが、昔は2世帯住宅だったため、親が老人ホームなどに引っ越していっても、同居していた子供がそのまま住み続けるケースが多く、空き家の発生も抑制されてきました。しかし、現在では2世帯で同居しているケースは少なく、親が老人ホームへ引っ越した場合、その住宅は空き家になることが多いのです。
空き家発生を抑制するための政策として、2世帯住宅への改修を行った場合、所得税を軽減できる制度が新設されました。3世代で同居(いわゆる2世帯住宅です)するための改修工事に対して、その工事費の一部を所得税から控除できるのようになるものです。現金で工事を行った場合は工事費の10%(上限25万円)、融資を受けて工事を行った場合は年末のローン残高の2%を所得税から控除できるようになります。
対象工事 | 2世帯住宅化の費用(水回り設備の増設など) |
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補助期間 | 2016年4月~2019年6月 |
所得税の減額 | 自己資金でのリフォーム:工事費の10%(上限25万円) 融資でのリフォーム:年末のローン残高の2%分を5年間 (リフォーム工事費用以外は1%) |
備考 | 所有者の所得が3,000万円を超える場合は利用できません。 中学生以下の子供がいる必要があります。 住宅ローン減税との併用はできません。 |
このような減税をはじめ、来年は空き家対策がいよいよ本格化していきます。活用しようとする所有者に対する支援が拡大されるとともに、適正管理に向けたチェックも厳しくなっていきます。ただ、空き家所有者の中には、このような動きを知らない人が多いのも事実です。今回の税制改正、そして空き家対策特別措置法の周知を徹底していくことが、適正管理や活用を進めていく上では非常に重要になるのではないでしょうか。