2019年10月3日 公開
総務省から「住宅・土地統計調査」の詳細が発表となりました。住宅・土地統計調査は総務省が5年に1度実施しており、空き家の数や種類の他、住宅の種類や所有・賃貸、世帯主の年齢など、住宅に関するあらゆる情報を調査しています。
空き家数が最も注目を集めている統計ですが、様々な角度から分析することで新しい発見もあるため、当センターでは仮説を立てては集計・分析をしています。
今回は「その他住宅の空き家数」と「65歳以上の単身世帯のうち住宅を所有している人」の比較をしてみました。「その他住宅の空き家数」は売却、賃貸、二次利用(別荘等)がされていない住宅で、一般的にはいわゆる空き家と呼ばれるものです。「65歳以上の単身世帯のうち住宅を所有している人」は、高齢者施設や子供宅への転居や相続により今後空き家になる可能性が比較的高い世帯とされます。
都道府県ごとにこの2つを比較すると、北海道、鹿児島県、高知県などで空き家数(オレンジの折れ線グラフ)を65歳以上の単身世帯数(青の棒グラフ)よりも目立って大きくなっています。上記のグラフは、現在の空き家数に対して空き家予備軍がどれくらいいるかを示したものです。また、下の表はその比率(高齢単身世帯数÷その他住宅の空き家数)を上位と下位それぞれ10都府県を並べたものです。
この表からは空き家が既に多い地域では空き家予備軍となる高齢単身世帯が多くさらに空き家が増えていく可能性が高いということ、そして大都市や安定した雇用がある地域(人口の増加または維持が見込める地域)では空き家の増加が比較的少なくなるのではないか、ということでした。ただ、大都市はそもそも住宅数が多いことから、空き家予備軍比率の高い地域以上に空き家が発生してしまう可能性がある点には留意が必要です。
この統計からは現在の空き家数と今後空き家になる可能性が高い地域しか推測できません。今後、実際に空き家が増えていくかどうかは、各自治体の空き家対策や不動産所有者による相続対策(遺言書や民事信託など)にかかっています。また、民間企業や団体による新たな空き家対策サービスの開発も空き家発生の抑制には必要不可欠となるでしょう。所有者やその家族はもちろん、官民も協力して空き家対策を進めていく必要がありそうです。