2019年7月16日 公開
先日のコラム「空き家数は過去最高の846万戸に(平成30年住宅・土地統計調査)」でご紹介した通り、2018年度に調査された住宅・土地統計調査では、空き家戸数の増加は想定されていたものよりも大幅に少ないという結果になりました。民間シンクタンクでは空き家戸数は200万戸近く増加し、1,000万戸程度まで増加すると予想されていましたが、実際にはわずか約26万戸増の846万戸となったのです。いわゆる空き家、と呼ばれている「その他住宅の空き家(売却、賃貸に出されておらず、別荘などとして所有者がたまに使っているわけでもない住宅」も29万戸の増加に留まりました。
当センターには、なぜ想定よりも空き家の増加が少ないのか、といったお問合せが多数寄せられています。そこで、民間シンクタンクで参考にされていた住宅着工戸数と滅失登記件数、そしてその差について資料を作成してみました。建築着工戸数は戸建住宅の推移をはかるために注文住宅と建売住宅の件数を合算しました。また、滅失登記件数は、建物を解体したことを法務局に届け出た件数で、こちらは住宅以外の用途も含まれます。今回は住宅・土地統計調査と同様、2008年、2013年、2018年時点と5年ごとのデータ集計(累計)をしています。
結果は、滅失登記件数はほぼ横ばいでしたが、2014~2018年は住宅着工が大きく増加したため、住宅建築から滅失登記の件数を引くと過去10年間と比較すると大幅な増加となりました。また、滅失登記件数と同様に建物の解体数を調査する「建築物滅失統計調査」の「住宅除却数」でも比較をしましたが、こちらも同様に建物解体数に大きなトレンドの変化はありませんでした。つまり、これら二つの統計からは住宅総数はこれまで以上に増加傾向を強めることが予測され、その結果として空き家はこれまで以上のペースで増加すると想定されてきました。しかし、記事冒頭でもお伝えしました通り、住宅・土地統計調査によると住宅総数は過去10年間と比較して増加ペースが緩やかになったという結果となりました。
今回のデータ検証からは、なぜ空き家数の増加が予測より大幅に抑制されたのかは分かりませんでした。空き家数は住宅ストック数という供給側の要素以外では、需要側では世帯数(外国人世帯を含む)に大きく影響されます。次回は世帯数についてデータを作成し考察してみます。