2017年10月31日 公開
先日、とある士業の先生から空き家の相続人調査のお話をお伺いしました。その空き家はお寺の境内にある、いわゆる檀家でした。ただ、長い年月の中で誰が所有しているか不明な状態が続いていたそうです。広い境内の片隅にあった空き家のため、老朽化は進んでいましたが近隣住民たちも問題視はしておりませんでした。
しかし、空き家の一部が道路拡幅による土地収用の対象となってしまいました。行政による調査の結果、法定相続人は300名以上にもなることが判明しました。さらに、大部分の方たちは後期高齢者でしたので、このまま放置すれば法定相続人はさらに増える可能性が高いことも分かりました。もちろん、ほとんどの方が空き家を所有していることは知りませんでした。
さらに、これだけ人数が多くなってしまうと、中には海外に住んでいる方(所在が不明になりやすい)、生死すら分からない方、相続が途絶えてしまっている方(法定相続人がいない、または法定相続人が全員相続放棄している)など、土地収用を進める中で様々な問題が起きてしまっていたのです。もちろん、300名を超える全ての法定相続人から了承が得られなければ土地を収用をすることはできません。
今回のケースでは、裁判を通して法定相続人全員から了承(または異議が無かった)していただき、無事に空き家と土地を収用することができました。土地の相場価格は約200万円程度ですが、それを大幅に上回る費用が手続きにかかってしまいました。
登記は任意となっているため、空き家を相続しても登記されないケースも少なくありません。しかし、登記をせずに放置してしまうと子孫たちが困ってしまいます。権利関係が不明確または複雑になっている空き家の利活用は容易ではありません。今回のケースのように空き家の法定相続人が300名を超えることは非常に稀ですが、法定相続人が数十名まで増えてしまっている、というケースは良く目にします。
将来世代が空き家を利活用しやすくなるよう、空き家の相続登記は必ず行うようにしましょう。